ネットワーク技術を学ぶ上で避けて通れないのがIPアドレスだが、近年IPv6と呼ばれるアドレス規格を頻繁に目にするようになった。一体どのようなものなのかを学んでみよう。
目次
IPv6とは?
IPアドレスとはいわば「ネットワーク上におけるコンピュータの住所」というのは「ざっくり理解するIPアドレスとは?」のページでも紹介した。
その際に紹介したIPアドレスというのは32ビットの2進数を8ビットずつに区切り、それを10進数で表現したIPv4アドレスというものだが、 IPv6(InternetProtocol version6)はその次の主流規格であり、一部ではすでに浸透している規格である。概念的にアドレスが住所という部分は変化していないが、表記方法も大きく異なり、IPv4の上位互換という訳ではないので気をつけていただきたい。
なぜIPv6なのか?IPv4の枯渇問題
そもそも「なぜIPv6や次世代規格が必要になっているのか?」今までどおり「IPv4ではいけないのか?」という疑問をもたれるかもしれないが、そこには「IPアドレス枯渇」という大きな問題が横たわっている。
IPv4でわりふることの出来るアドレスの数は2の32乗であり4294967296個だが、これを世界各国に一定数割り当てていったところインターネット回線および接続端末の激増により、4294967296個では到底足りなくなってきてしまった。
実際、IANA 「Internet Assigned Numbers Authority」(IPアドレスを管理する最上位の組織)では2011年2月3日にIPアドレスは枯渇している。現在その下につらなる組織「RIR」がIPの在庫をやりくりしている状態である。またIPマスカレードなどの技術を駆使してアドレス数を節約しているのが現状である。
そこでIPv6という規格を使用することになる。IPv6ではアドレス長は128Bitとなっている。つまり2の128乗個のアドレスが使用可能になり、到底枯渇することのない十分なアドレス数を確保できるようになっている。
IPv6のメリット
IPが枯渇しない
上記でもあるように2の128乗ものアドレスがあるため、IPマスカレードの必要性が低下する。変換処理がなくなることでルータやサーバへの負担が軽減されるのである。また個々の端末同士の通信がやりやすくなる。
セキュアになる
プロトコル自体にIPSecなどを使用することが可能になっている。これによりセキュアな通信が可能になってくる。
自動でアドレスを割り当てられる
IPv6ではデフォルトでIPを割あてる仕組みが提供されるためエンドユーザの負担が軽減される。
ネットワーク負荷の軽減
ネットワークに負担をかけやすいブロードキャストが廃止されている。
などがある。
アドレスの表記方法
アドレスは従来の10進数から16進数となり、16bitごとに「:」でくぎりをいれる。計8フィールドにとなる、アルファベットは大文字、小文字は区別されない。
一例をあげると
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2001:0db8:0000:0000:1235:0000:0000:0abc |
といった表記になる。
長いため表記時、いくつかの省略ルールが存在する
ルール1:各ブロック先頭の「0」は省略可能
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2001:db8:0000:0000:1235:0000:0000:abc |
ルール2:「0」だけのブロックは「0」で表記可能
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2001:db8:0:0:1235:0:0:abc |
ルール3:「0」のブロックが連続する場合は省略::で表現可能、ただしアドレスのなかで一度だけ
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2001:db8::1235:0:0:abc |
となっている
アドレスの種類と型
IPv6は「ユニキャストアドレス」、「エニーキャストアドレス」、「マルチキャストアドレス」に分類できる。アドレスは機器そのものではなく機器のネットワークインターフェイスに付与されるものである。
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ユニキャスト形式の通信は1対1の通信を行う場合に使用されるアドレスである。コンピュータからコンピュータの通信をしたいときなどに使用されることになる。ファイル転送やリモート操作などがこれにあたる。
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エニーキャスト形式の通信は最も近いところのノードと通信をするためのものだ。用途としては大規模なDNSサーバなどが上る。
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マルチキャスト形式の場合1対多の通信をするときに使用される。多数のノードに同時に同じ物を送信するときに使用される。
また型、ローカルループバックなどの形式は以下のようになっている
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ローカルループバック ::1/128
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マルチキャスト ff00::/8
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リンクローカルユニキャスト fe80::/10
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グローバルユニキャスト 2000:/3
プレフィックスとインターフェイスID
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2001:0db8:0000:0000:1235:0000:0000:0abc/64 |
末尾の「/64」などの表記はCIDR形式と同様であり、プレフィックスレンジという表記方法だ。サブネットマスクは使用しない。
IPv6ではIPv4のホスト部だったものが「インターフェイスID」とよばれるようになった。
インターフェイスIDは手動または自動で設定が可能になっている。
自動設定の場合一意なインターフェイスIDを生成する仕組みがあり、その仕組みをEUI-64という。EUI-64はMACアドレスを元にアドレスを生成するようになっている。
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2001:0db8:0000:0000:1235:0000:0000:0abc/64 |
となっていた場合
2001:0db8:0000:0000:ここまでがネットワーク部でありプレフィックス
1235:0000:0000:0abc ここまでがインターフェイスIDとなる
まとめ
本記事ではIPv6が大体どのようなものかを紹介した。IPv4の有限なアドレス数に対して、理論上の限界はあれどほぼ無限に使用できるアドレス数を使用できるIPv6はまだまだこれから普及が進む規格である。近年ではIoTなど「モノのインターネット」を構築する上でも重要な規格となっている。様々な用途について調べてみよう。