LPICとは、Linux技術を証明するための資格試験だ。
技術者のスキルを証明するための資格は数多くあるが、LPICほどIT業界で標準的になっている資格は少ない。
世界中で資格を展開し、Linuxの技術者認定試験としては世界最大だ。プロのエンジニアを目指す方にとっては、もってこいの資格だろう。
そこで、このページでは、LPICの詳細について詳しくご紹介する。 どのような試験で、どういった内容で、どのように勉強すればいいかこのページを見ればわかる。
ぜひ、資格の取得やキャリアアップの役に立ててほしい。
目次
LPICとはどのような資格か?
まずはLPIC資格の概要を説明しよう。
LPICとは「Linux Professional Institute Certification」の略で、エルピックと読む。名前の通りLinuxの試験である。
Linuxの資格試験
LPICはLinuxのスキルレベルを測るための、ベンダーニュートラルな試験だ。Linuxと一言で言っても、実際には種類がたくさんある。それらの種類に依存しない、中立な立場(ベンダーニュートラル)を保っている。
ベンダーニュートラルでないLinuxの資格試験は多々あるが、どれもLPICほど有名ではない。
Linuxの資格試験 = LPIC と考えて構わない。
世界標準になっている
LPICはもともと日本の資格ではない。カナダで生まれて、世界で展開されている試験だ。
世界中で50万人が受験をしており、150ヶ国以上で展開されている。Linux技術者認定試験では圧倒的な世界一になっている。
試験開始から15年が開始しており、2016年1月の時点で合格者は13万人を超えた。
日本での需要
欧米でも人気のある資格だが、特に日本では人気がある。
日本の風土が資格と相性がいいためだろう。企業の新入社員研修や転職の条件として提示されることが多くなっている。
現在、27万人が受験しており、受験者数は伸び続けている。実際取った後の人事や上司の満足度も高いと言われており、採用や給与アップの基準にしている会社も多い。
また、そもそも日本はLinuxに対しての初動が遅かったためか、Linuxのエンジニアが常に足りない現状が続いている。そんな状況にも関わらず、Linuxの適用範囲は広がり続けているという状況だ。そのため、LPICも教育面や採用面でニーズが高まっている傾向にある。
日本ではLPI-JapanというNPO法人が試験を提供している。
LPICを取るメリットとは?
LPICを取得するメリットは下記の2つだ。
- 仕事やキャリアップにつながる
- スキルが上がる
仕事やキャリアップに繋がる
ITメディア(@IT自分戦略研究所)の調査によると、「最もキャリアップ(昇級や転職)につながったベンダーニュートラル試験」で「一位」に選ばれている。
出典:LPI-Japan
「Linuxの需要が高まっている」「Linuxエンジニアの数が不足している」という二つの要因からであろう。
実際、リスキルテクノロジーでも、企業側が求めるニーズとしてLPIC研修の需要はやはり高い。また、新入社員の研修としてもLPICをひとつのゴール基準として研修を受けさせる企業は年々増加している傾向にある。
スキルが上がる
これも@IT自分戦略研究所の調査だが、「最も実務で活かせたベンダーニュートラル試験」でもダントツの一位を獲得している。
出典:LPI-Japan
実際に問題を見てみればわかるが、実務的な内容が多い。Linuxの根本を知ることもできるため長期にわたり役立つ知識が身につく。
もちろん、資格試験特有の「これ、覚える必要あるのか?」という問題もないわけではない。しかし、資格試験の中でこれほど実務に直結しているものは少ない。
企業もそれがわかっているため、 Linuxのスキルを証明する手段として優秀な資格になっている。実際、取得満足度が90%を超える資格はなかなかないだろう。
LPIC試験の具体的な内容は?
LPICは三段階に分かれている。順次ステップアップする必要があり、上位レベルの試験を受けるためには下位試験に受かっている必要がある。
それぞれの段階もいくつかの試験に分かれており、資格合格の条件は違う。
- LPICレベル1は、101試験と102試験に分かれ両方とも合格する必要がある
- LPICレベル2は、201試験と202試験に分かれ両方とも合格する必要がある
- LPICレベル3は、300試験・303試験・304試験があるが、どれかひとつでも合格すればLPIC-3合格と見なされる
それでは、それぞれの内容を見ていこう。
LPICレベル1
LPIC-1を取得すると、サーバの構築・運用・保守ができるLinuxエンジニアであることを証明できる。
レベル1を取得するだけでも、Linuxが多少わかっている人材だと見なされ、キャリアアップに有益だ。
内容
内容としては、運用・保守およびLinuxの全体像理解を確認する問題が多い。 LPICレベル1では、次の内容が試験範囲となる。
101試験
- システムアーキテクチャ
- Linuxのインストールとパッケージ管理
- GNUとコマンド
- デバイス、Linuxファイルシステム
102試験
- シェル、スクリプト、およびデータ管理
- ユーザインターフェイスとデスクトップ
- ユーザの追加やクロンなど管理業務
- 重要なシステムサービス
- ネットワークの基礎
- セキュリティ
初心者の方にとっては、システムのアーキテクチャやシェルが壁になるだろう。しかし、しっかりとLinuxの基礎を学ぶいい機会だ。暗記するだけではなく、理解をしよう。
勉強期間
一般的に1ヶ月から3ヶ月と言われる。スクールに通えばだいたい半分の時間で合格する。
LPICレベル2
LPIC-2を取得すると、サーバ構築ができるエンジニアとして見なされる。LPIC-2に受かる知識があれば、大規模なサーバーでなければ自力で構築ができ、運用ができる。 多くのIT企業で重宝されるレベルのスキルだ。
内容
内容としては、各種サーバの構築やネットワークの構築、LPICレベル1の内容をより深くしたものが主となる。
201試験
- サーバのキャパシティプランニング
- Linuxカーネル
- システムの起動 ファイルシステムとデバイス
- 高度なストレージ管理
- ネットワーク構成
- システムの保守
202試験
- ドメインネームサーバ
- Webサービス
- ファイル共有
- ネットワーククライアントの管理
- 電子メールサービス
- システムのセキュリティ
LPIC-2の学習は、DNSやApacheといったLinuxの基本サーバ構築を学べるいい機会だ。ぜひ、暗記をするだけではなく、構築する楽しさを感じて欲しい。
勉強期間
一般的な勉強期間の目安としては、3か月~半年程度と言われる。ただ資格のために勉強するのではなく、自分でサーバを立てながら学ぶことをオススメする。
LPICレベル3
LPIC-3は難易度が大きく上がる。まさしくスペシャリティを証明するための資格試験と言える。
内容
LPIC-3は3種類の試験があるが、専門性が上がるため、いずれかひとつでも合格すればLPIC-3を取得したことになる。
LPIC-3 Specialty Mixed Environment (300)
Linuxだけですべてが回ればいいのだが、そうはいかない場合がある。Linux、Windows、Unixが混在するシステムというのは企業内で存在してしまうのが現状だ。
LPIC-3 300を取得すると、これらがミックスされた環境を設計、構築、運用・保守ができるエキスパートエンジニアであることを証明できる。
- OpenLDAP の設定
- OpenLDAPの認証バックエンドとしての利用
- Sambaの基礎
- Sambaの共有の設定
- Sambaのユーザとグループの管理
- Sambaのドメイン統合
- Sambaのネームサービス
- LinuxおよびWindowsクライアントの操作
LPIC-3 Specialty Security(303)
耳ダコになるほど、セキュリティという言葉が出回っている。クラッカーが個人情報を盗む、サーバを攻撃するなどが頻繁になり、どの企業もセキュリティ強化に躍起になっている現状だ。
303はセキュリティを中心とした試験だ。セキュリティレベルの高いコンピュータシステムの設計、構築、運用・保守ができるエンジニアであることを示すことができる。
- 暗号化
- ホストセキュリティ
- アクセス制御
- ネットワークセキュリティ
LPIC-3 Specialty Virtualization & High Availability(304)
近年データの多くがクラウドに置かれるようになってきた。クラウド環境を構築できるエンジニアの有用性が高くなっているのは当然と言える。
304では、クラウドの設計、構築、運用・保守ができるエキスパートエンジニアであることを証明できる。
- 仮想化(Xen/KVMなど)
- 高可用クラスタ管理
- 高可用クラスタストレージ
勉強期間
一般的な勉強期間の目安としては、半年~1年程度と言われる。細分化されることからそれぞれの希少価値も高い資格だ。学習は大変だが取っておいて損はない。
費用と合格点
1試験あたり15,000円となる。
例えばLPICレベル1を取得するためには101と102の合格が必要だが、2つ合わせて30,000円費用がかかる。
また、LPICレベル3では1試験あたり30,000円となる。安い金額ではないので、合格の自信をつけて受けに行こう。
合格は約65%と言われており、約60問中40問正解すれば合格となる。
受験の仕方
ピアソンVUEという試験配信会社があり、提携しているテストセンターで受けることができる。
ほぼ毎日試験を受けることができるので、自信がついたタイミングで予約を入れるのがいいだろう。(もしくは予約を先にしておいてプレッシャーをかけるの試験対策としてとてもいい)
LPICの勉強方法
LPICの勉強方法は大きく2つある。
独学で学ぶ
1つは独学で学ぶ方法だ。メリットとしてはとにかくお金がかからないことに尽きる。
資格試験ではあるが、Linuxを触ったことがない状態で受かることは難しいだろう。 まずは、手元のパソコンでLinux環境を構築して、実際に触ってみることをオススメする。
参考書では、「あずき本」と呼ばれるテキストがもっとも有名だ。 一定の知識がある人にとってはいい教科書になる。
しかし、完全にゼロから勉強するには難度が高く、オススメしない。 ゼロから勉強するのであれば、なるべく薄い参考書を選ぶことが大切だ。はじめから難しいテキストを読んでしまうと、挫折してしまう。
例えば、LPIC合格読本などは非常にわかりやすい。ver4ではなく、ひとつ前のverは3.5に対応している形だが、大きくは変わらないため、基本をこのテキストで勉強し、問題集を追加で解くのがいいだろう。
この2冊はどちらもリスキルテクノロジー講師が書いたテキストだ。しかし、他の著者でもいい本が出回っている。
LPICの参考書についてはまた機会をみてまとめる。
教育機関で学ぶ
ふたつ目の方法は教育機関で学ぶ方法だ。
この選択のメリットは、実務に近い技術を実際に学べることだろう。多くの教育機関ではプロのエンジニアが講義を行う。実際の現場でのコマンドの使われ方や、どこを重点的に理解すべきかという勘所が聞ける場となる。
資格対策だけであれば、テキストやWebサイトで十分に勉強することができるだろう。
資格を就転職やスキルアップに繋げたいのであれば、スクールへ通うことをオススメする。
LPICをどこまで取ればいいか?
「エンジニアの入り口に立つ!」という当サイトの趣旨からすると、まずはLPICレベル2まで取得するのがいいだろう。
コマンド操作は概ねできて、サーバ構築にも対応できる。そんな存在であれば、会社はサーバ構築系の仕事をあなたに振りやすくなるし、新しい職場へ行くことも高い確率で可能になる。
未経験からエンジニアになるのもだいぶ容易になる。LPICレベル1だけでも有利なことには変わりないが、できればレベル2までの取得が良いだろう。
インフラ技術はスキルレベルの証明が難しい。LPICはそれができる数少ない方法だ。
実際、LPICは「取得したい資格ランキング」で8年連続 第一位という快挙を成し遂げている資格だ。 未経験からエンジニアになる際、サーバやネットワークといった分野は年齢の壁も低い。
もしあなたがエンジニアを目指しているのであれば、LPICを勉強し、Linuxエンジニアとしての一歩目を踏み出していただければと思う。
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