セールスエンジニアという職種をご存じだろうか?
字面からはその仕事内容が推測したかもしれないが、恐らくそれはほとんど正解に近い。実際に「セールスするエンジニア」なのだ。
では、いわゆる普通の営業との違いはどこにあるか?
このページではその答え合わせを兼ねて、セールスエンジニアの仕事内容と活躍する場面についてお伝えする。
目次
セールスエンジニアの仕事とは?
困っている人への解決
昨今、多くの会社がシステム化を進めている。例えばオンラインショッピングで何かを購入するとその発送状況を購入者が把握出来る。発送する工場も、在庫管理がシステム化されている。
お店で買い物をするときにバーコードをピッと読み取るあれもまた店内の売れ筋や在庫補充の参考データとなる。ごくごく小規模な個人商店ならいざ知らず、やはりある程度の情報をとりまとめるのはコンピュータが得意とするところだ。
毎日の売上帳簿を手書きで書くお店を想像して欲しい。従業員の記述ミスもあるだろうし、管理者は毎日承認印を押さなければならない。最後は集計の計算も必要だ。システムがないばかりに管理者の仕事はいたずらに増える一方だ。
世の中にはPOSシステムというものがあり、無理のない金額で導入ができる。しかし、そもそもその存在を知らないと、その便利さについて知ることもできない。また、ITというだけで毛嫌いをしてしまう人たちもいる。そういった人たちはITが嫌いなのではなく、慣れていないことへの抵抗感を示しているだけだ。
セールスエンジニアの登場:通常の営業との違い
そこにセールスエンジニアが登場する。困っている人たちに、最適解を提案し、買ってもらうのがセールスエンジニアの仕事だ。
先のPOSシステムの例では、個人店では売れ筋が分かる程度だが、全国規模のチェーン店だとデータマイニングとかビッグデータとか、そういう言葉と一緒に語られることが多い。
どの地方は男女比どの程度で、どの年齢層が、何をいくらぐらい買うことが多いのか。売れる時間帯はいつか。こういうことを分析出来るわけだ。
ただこのシステムにしても、どんな機器をどの程度置けば顧客は助かるのか? 技術的問題はないか? ただただシステムを導入してもらうことにしても、本当に満足いただけるかどうかは、どうしても技術的な視点が欠かせない。
溜まったデータを過去いつまでの分を持っておくのか? そのコストはどれくらいかかって、それくらいメリットがあるか? システムの管理の手間はどのくらいになるのか? 導入するためにはどんな環境が必要なのか? どんなカスタマイズだったらニーズを満たせて、かつシステムの修正を最小限に抑えられるのか?
こういう検討事項をITの知識がないセールスマンが解決するのは大変だ。通常の営業とセールスエンジニアの違いは、「技術的側面を詳しく検討・説明出来るか」だ。
つまり、通常の営業よりエンジニア寄りである。だから通常の営業では気づけない、今相談されている困りごとの以外の、もっと潜在的な問題も発見して改善を提案するのも仕事になる。
開発系のエンジニアとの違い
ではセールスエンジニアはエンジニアなのかというと、これもちょっと違う。セールスエンジニアは通常、設計やプログラミングを行わない。
ただし最近流行の技術情報や、どういうカスタマイズであれば対応可能か、はたまた自社の製品の技術的メリット、他社製品の方が得意なところ、そういう知識は多く蓄えている。
そればかりではなく、例えば顧客先が製造業であった場合、業界のやり方やルールについて(「業務知識」と呼ばれるものだ)深く知っていないといけない。
開発室にこもりがちなITエンジニアも業務知識がなければ不便な点は多いが、セールスエンジニアは直接顧客と会話するわけなので、その必要性が違う。
セールスエンジニアの仕事内容
顧客とその業界用語を交わしながらあれこれと商談を進められるだけの技術的背景、業務知識、そして社交性と営業力が求められるセールスエンジニアだ。その仕事内容をもう少し掘り下げて紹介しよう。
販売・契約などの商談
最終的に契約印をもらうのは営業や上役かもしれないが、印鑑を捺してもらうまでに「いくらかければいつまでに、何がどう便利になり、今後は月々いくらでそれを使い続けてもらえる」といったメリット・デメリットを説明するのはセールスエンジニアの独壇場だ。
よく技術的背景も分からないのに安易に契約を取り付けてしまっては、実は作るのが難しかったり手間がかかる開発だったりで、開発現場が火の車になってしまう。
これを防ぎ、自社の開発力を把握した上で、かつもっとも利益を上げられる提案を模索して提案する。
システムがどの程度安定して動けばいいか交渉するのも仕事のうちだ。いついかなる時も24時間365日稼働しなければならないのか、それとも夜中は停止してよいのか。できあがったものを今後も要望に応じて改修するのかしないのか。
ダイレクトに責任範囲と報酬の話をするだけに、やりがいは大きい。
導入サポート~維持運用の窓口
新たにサービスを契約し、いざ使ってもらおうにも準備がいる。顧客先にできあがったシステムを導入・設定し、使い方が複雑であればマニュアルを片手にレクチャーを行う。
せっかく作ったシステムをフル活用してもらうためのサポートもセールスエンジニアの仕事のひとつだ。
システムはできあがり、顧客は大満足、双方幸せになりました、で終わればよいが、大抵の場合、「使ってはみたものの、もうちょっとここがこうなってくれればよいのだが」という意見はよく上がってくるものだ。
例えば勤怠管理システムを入れてはみたが、休憩時間が1度しか記録出来ないので2回に分けて休めないから困ってしまった、などと相談されることもあるだろう。大きなシステムなら専門のヘルプデスクを用意するかもしれないが、顧客先で出た問題を実際の現場を見てみましょうということになれば、出向くのはセールスエンジニアだ。
こういう相談に対して、顧客の満足と自社の売上を勘案しつつ、窓口になるのもセールスエンジニアの仕事と言えよう。
セールスエンジニアの必要性
ここまで説明したように、セールスエンジニアは立ち位置がモノ作りのエンジニアより顧客に近い。かといって営業ほど営利性を求められたりもしない。
しかしセールスエンジニアは今まさに需要が高い仕事だ。
情報化が進む現代社会、あらゆる業務のあらゆる場面でITがもたらす効率性は高い。にもかかわらず、IT技術に疎い潜在顧客は「なにをどうしたらより楽が出来るか」分かっていないことが多いのだ。
自社製品を導入すればどれほどの効率化が見込めるかは営業だけでも説明出来るが、顧客が使う業界用語を顧客の目線で、さらには実現可能性まで加えて話が出来るのはセールスエンジニアしかいない。
今まで営業だけのセールスでは、実は大変困難な課題を伴う注文になることに気がつかずに数字ばかりを追いかけて現場は納期厳守に追われてしまう結果となることもよく聞かれた。
これからは顧客も現場の苦労もわかる、セールスエンジニアこそが顧客と現場を結ぶ第2の強固な橋となる。
セールスエンジニアになるには
営業力と技術知識という2つの武器を持たねばならないセールスエンジニアになるのはなかなか大変だ。もしセールスエンジニアを志そうとするなら、大きく2つの道があるだろう。
通常のエンジニアからのジョブチェンジ
まずは通常のエンジニアとして腕を磨くことだ。
プログラミング、そのうち設計をするようになると、技術者サイドとして顧客と話をすることも出てくる。このとき営業も同行するだろうから、どうしたらより利益が上がるのか一緒に作戦を練って数字を管理する意識を上げていく。
自社の営業にも顧客にも頼りにされるようになれば、自然と自分の席で設計作業をしている時間は少なくなっていく。
営業しつつ勉強してなる
最初から営業として活動し、エンジニアリングの勉強を進めていくのも方法のひとつだ。技術的なことはIT業界にいても、仕事を通してはなかなか学べない。技術的なことは勉強する以外に手はない。
体系だって技術知識を学ぶには、資格合格を目指すのもいい手だ。国家資格としてITパスポート試験や基本情報処理技術者試験がある。
ITパスポート試験は、広く社会に求められる最低限のIT知識を問うもので、合格すればコンピュータとネットワーク、あるいはセキュリティについて、広く浅く学べる。
基本情報技術者はITエンジニアとしては最低限の資格で、合格出来ればエンジニアとして初級クラスの知識を身につけたことになる。営業よりのセールスエンジニアとしては、ここまで取得しておけば強いだろう。受験機会は春と秋の年2回ある。
こうした勉強を通して、さらっと技術的なことまでかみ砕いて顧客に説明出来るようになったとき、セールスエンジニアへの階段を一段登ったことになる。
まとめ
セールスエンジニアとは、エンジニアではなく、営業でもない。しかし、プロフェッショナルなスキルをもった確固たる職業だ。
モノは売れば終わりではない。ましてや、システムはなおさらだ。顧客も喜び、自分たちも潤い、誰しもが幸せになれる落としどころを探るのがセールスエンジニアの仕事だ。
顧客と積極的にコミュニケーションを取りつつ、戻ってくれば技術者と細かいエンジニアリングの話をする。そんな姿に共感出来るなら、ぜひセールスエンジニアという道を検討してみて欲しい。